【2〜3月が旬】はっさくにまつわるお話

一年中出回っているかんきつ類ですが、最も流通量が多いのが2〜3月。
スーパーや八百屋さんにもたくさんのかんきつ類が並んでいます。
その中でも、グレープフルーツに似た苦味が特徴なのが、はっさく
漢字では「八朔」と書きます。
皮が厚くてむきづらいという人も多いですが、なんといってもサクサクとした歯ごたえと独特の苦味がたまりません。

はっさくの生まれは広島県因島

はっさくの生産は、和歌山県が7割を占めますが、生まれは広島県の因島(いんのしま)です。
そう、しまなみ海道が通る瀬戸内海に浮かぶ島のひとつ。
以前ブラタモリでもやっていましたが、因島は室町時代から戦国時代にかけて村上海賊の拠点だった島です。
はっさくが発見されたのは、いまから160年前の江戸時代末期。
浄土寺で、当時の住職であった恵徳上人(えとくじょうにん)によって発見されました。

はっさくの名前の由来は?

はっさくという名前がついたのは、1886年(明治19年)。
8月1日(八月朔日)を意味する名前となったのには、当時はっさくが8月1日頃から食べられていたことが理由となっています。
実際には旧暦8月1日頃には、まだ実が小さくて食べるには早すぎます。
はっさくの収穫時期は12〜3月頃で、収穫後に1〜2カ月貯蔵され、酸味の落ちる2〜3月が食べ頃となります。
現在の旬の時期とかなり時期がズレているので、どうしてはっさく(八朔)とついたのか疑問です。

因島といえばはっさく大福

因島発祥であるはっさくの実を白餡とみかん餅で包んだはっさく大福は、広島名物としても知られています。
果皮がしっかりしているので、水分が出にくく、大福の甘さとはっさくの酸味と苦味のバランスが絶妙です。

 関連記事はこちら↓

【ホッとするおいしさ】あんこの魅力

料理との相性もよいはっさく

はっさくは、独特の苦味や食感の特徴を生かして、お料理との相性がとてもよいです。
水分が出にくいため、サラダにおすすめです。
ルッコラや生ハムと合わせて、オリーブオイルやドレッシングをかければおもてなしにも映える一品に。
白身魚と合わせてカルパッチョにしてもおいしそうです。

みをつくし料理帖 八朔の雪

果物のはっさくとは関係ないのですが、はっさくといえばこの本を思い浮かべます。
髙田郁さんの時代小説「みをつくし料理帖 八朔の雪」。
大坂・淀川の大洪水で両親を失い、天涯孤独の身になった少女・澪(みお)が、
上方と江戸の味の違いに戸惑いながらも、料理人として一歩一歩成長してゆく物語です。

「八朔の雪」とは、八月朔日(ついたち)に吉原の遊女たちが白無垢を着ている情景をいうのだそうです。
小説のなかでは、真夏のある日、冷たい心太(ところてん)に真っ白なお砂糖を振りかけ、
それが青白い月の光に照らされて雪のように映ったことから、それを「八朔の雪」に重ねているのです。

ちなみに、澪の生まれ故郷である上方(大阪)では、心太にお砂糖をかけて食べるのだそうです。
この章を読んでいたら、無性に心太が食べたくなりました。
週末、谷中の三陽食品に行ってみようかな。

みをつくし料理帖
著者:髙田郁


 関連記事(三陽食品さんの記事を掲載しています)↓

【春を探しに】湯島からの谷根千さんぽ

まとめ

2〜3月が旬のはっさく。
近年、かんきつ類は品種改良されて、種類も増え、甘味のあるものが人気ですが、
古くからある味の良さを改めて感じてみるのもよいものです。
そのまま食べてもおいしいですが、サラダやカルパッチョに入れて、
独特の苦味と歯ごたえのある食感を楽しんでみてください。
少し古くなってスカスカになってしまったはっさくは、ハチミツでマリネするとおいしさが蘇りますよ。

関連記事↓

【ブームはまだまだ続く?】レモンの効果と国産レモンの魅力