【プルースト現象】無意識的記憶によって蘇る過去

「紅茶に浸したマドレーヌを口にした途端、過去の記憶が蘇る」
フランスの作家マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の名場面です。
プルースト現象」ともよばれています。
味覚や嗅覚だけではなく、聴覚、視覚、触覚といった五感によって、過去の記憶が蘇る経験は、誰にでもあるのではないでしょうか?

五感が呼び覚ます無意識的記憶

マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の中で、語り手はマドレーヌのひとかけらを紅茶とともに口に含んだ途端に、不意に素晴らしい快感に襲われ、何か貴重な本質で満たされたような気持ちになります。
それは、語り手が幼いときにコンブレーで、親戚の叔母が紅茶に浸して差し出してくれたマドレーヌの味だったのです。
それがわかると、一気にそのときの記憶が鮮明に蘇るのです。

そもそも、紅茶にマドレーヌを浸して食べる文化がない私達日本人には、あまりピンとこないかもしれません。
でも、同じように五感によって過去の記憶が蘇った経験はあるのではないでしょうか。

  • 上司の顔を見るたびに、学生時代の怖かった部活の先輩を思い出す(視覚)
  • カラオケで歌った曲で、過去の恋人のことを思い出す(聴覚)
  • すれ違った人の香水の香りで、好きだった人を思い出す(嗅覚)
  • 焼きそばパンを食べたら、中学時代の部活動の帰り道を思い出す(味覚)
  • モコモコ素材の毛布を触ると、大切にしていたぬいぐるみとその頃の思い出が蘇る(触覚)

五感ごとに例をあげてみましたが、現在のコロナ禍において、直接ものに触らないようにしたりしているせいか、「触覚」や「嗅覚」が鈍くなっているように思いました。

紅茶やコーヒーにパンやお菓子を浸して食べる文化

「紅茶に浸したマドレーヌを口にした途端、過去の記憶が蘇る」という現象は、
フランス人のプルーストだからこそ生まれたのではないでしょうか。
プルーストの生まれた国であるフランスをはじめ、ヨーロッパでは紅茶やコーヒーにパンやお菓子を浸して食べる文化が根づいています。
朝食に、パンをカフェオレに浸して食べたり、カフェでクッキーをコーヒーに浸して食べたりします。
カフェオレボウルというお椀のような器も、パンを浸して食べるためにあんなに大きいのです。
イタリアでは、ビスコッティというかたいクッキーをエスプレッソに浸して食べます。
また、スペインでは、チュロスをホットチョコレートに浸して食べるそうです。なんとも高カロリーですね。

そう思うと、文化っておもしろいなぁと思います。

まとめ

フランスの作家マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の名場面から生まれた「プルースト現象」。
五感が呼び覚ます過去の記憶にも、さまざまな文化の違いがあります。
コロナ禍の今は、五感の中でも触覚や嗅覚が鈍くなりがちなのかもしれませんが、どれも大切にしたい感覚です。